「ノルウェイの森」村上春樹
「ノルウェイの森」も大学時代に読んだ本です。
でも改めて10数年ぶりに読み返すと…感想がまた変わってくるのが面白いですね。
今年はなぜか昔読んだ本を読み返すのがマイブームになっております。
ノルウェイの森(上) (講談社文庫) [ 村上春樹 ]
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ノルウェイの森(下) (講談社文庫) [ 村上春樹 ]
私は昔も今も登場人物の中ではハツミさんに惹かれます。
ミッドナイドブルーのワンピースにイヤリングが揺れる彼女の美しい横顔。 ビリヤードが上手なお姉さん。 何かしら人の心を揺さぶる不思議な力。
昔、私は永沢さんタイプの男性を好きになってしまったことがあるので彼女にどうしても感情移入してしまうのです。
ささやかな幸福を求めていただけなのに・・・・。 それが永遠と叶えられることなく彼女はいなくなってしまうのですよね。
充たされることのなかったそしてこれからも永遠に充たされることのないだろう少年期のような憧景は誰にでも存在しているのではないでしょうか。
そして年齢を重ねて、感情移入してしまったもう1人の人物。
レイコさんです。
最初にこの本を読破したのが大学生の頃だった私も、既にレイコさんの年齢に近づいています。
最後、北海道でワタナベ君と決別するときの言葉。
「私はもう終わってしまった人間なのよ。あなたの目の前にいる私はかつての私自身の残存記憶にすぎないのよ。私自身の中にあったいちばん大事なものはもうとっくの昔に死んでしまっていて、私はただその記憶に従って行動しているにすぎないのよ」
若かった当時はレイコさんの言っていることがいまいちピンときませんでしたが、この年齢になって感情の喪失体験を重ねてきた事、人生の中で色々なことを諦めていきていく術を覚えてしまったこと、自分の心を殺さなければいけない出来事に直面せざるを得なくなったこと、それでも死にきれず感情を殺しながら身体だけで何とか生きている感覚を身につけている・・・・そんな今だからこそレイコさんのこの言葉はぐさりと胸に突き刺さりました。
若い頃は私は今後人生でどんどん得るものが増えていくのだろう、そう信じて疑っていませんでした、でも30歳を過ぎて人生とは得るものより失うものの方が多いことに気が付いてしまったのです。
それでも感情と折り合いをつけて生きていかなくてはいけない、過去を振り返らずにがむしゃらに前に突き進もうとしている、レイコさんは今の私を象徴した人物のような気がしてなりません。
昔はハツミさんこそ自分を象徴した人物だと思っていたのに、、、やはり歳を重ねると変わってきますねぇ(苦笑) |